政府万能感に酔いしれるMMT批判者たち
話題のMMTブームの仕掛け人、評論家・中野剛志が緊急寄稿
■MMT批判者の方が政府に幻想を抱いている理由
さて、この等式から明らかなように、民間部門が貯蓄超過である限りは、財政赤字は減りようもありません。
つまり、民間の貯蓄超過をもたらすデフレを放置したまま、財政赤字だけ削減することは不可能だということです。
逆に言えば、財政黒字のときは、その裏返しで、国内民間部門が赤字のはずです。
具体的に確認してみましょう。
アメリカでは、1990年代後半に財政が黒字化しましたが、この時期の民間部門は赤字でした。いわゆるITバブルが発生して、民間債務が急増していたのです。実際、1990年代末にITバブルが崩壊すると、それとともに財政の黒字化も終わってしまいました。
日本経済でも、同じような現象が起きました。
1980年代後半、日本の財政赤字は縮小し続け、1990年には黒字に転じました。同じ時期、民間部門の黒字は減少し続け、1990年に赤字に転じています。
もうお分かりでしょうが、この時期はバブルが起きていました。民間部門がバブルにより債務を増大させたことの裏返しで、政府の財政が黒字化したのです。
その後バブルが崩壊し、さらにデフレになり、民間部門が貯蓄超過になっていきました。それに伴って財政赤字は拡大し、現在に至っています。
というわけで、「民間部門の貯蓄超過=財政赤字」というのが事実であると確認できたと思います。
さて、そうだとすると、デフレで民間投資が停滞し民間部門が貯蓄超過である間は、どうがんばっても財政赤字を減らすことは不可能ということになります。
もちろん、政府が強引に支出を減らし、税率を上げることはできますよ。
しかし、だからといって財政赤字を減らせるとは限りません。
なぜなら、デフレ下で政府支出を減らしたり増税したりしたら、景気はもっと悪化します。
そうなったら国民所得が減少するので、結局、税収は増えません。税収が増えなければ、財政健全化は不可能でしょう。
要するに、デフレ下で民間部門が貯蓄超過である限り、財政赤字は減らない。それに、政府には支出の削減や税率の引き上げはできても、税収を意のままに増やすことはできない。
したがって、デフレ下での財政健全化はどんなに高い管理能力がある政府であっても不可能なのです。
過去二十年間、日本が財政健全化に失敗し続けてきたのも当然だったというわけです。
というわけで、財政健全化を求めるMMT批判者の方が、よっぽど政府の管理能力に幻想を抱いているということがご理解いただけたでしょうか。
このほかにも、日本には、「不必要」「不適切」「不可能」な政策がたくさん横行しており、それが日本経済をダメにし国民を無駄に苦しめています。
詳しくは『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』、『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』をご覧ください。
話題のMMTについても、分かりやすく解説しています。
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日本のMMT[現代貨幣理論]ブーム仕掛け人・中野 剛志の簡単解説。
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